家の中には「時の扉」があるらしい。

奇怪な現象が続いています。

これは、ぜひとも話しておかねばならないと、ばあさんMの家まで行くことにしました。

奇怪な現象

ここ数日、起きている奇怪な現象とは、何かと言いますと、

それは、足にまつわるものが、消えるって現象でございます。

〜消えた 赤い靴下〜

最近、買ったばかりの赤い靴下。

靴下コーナーで目についた赤い靴下。あまりに魅力的だった。

黒っぽい服が増えるこの時期。アクセントが欲しくて買ったのです。

なのに、見当たらくなってしまった。

探し続けて、３日になるのに、どこに行っちゃったというの。

赤くて、かさばるのに、どこにいったの？

〜消えた 赤いスリッパ〜

寒くなったので、使い始めた赤いモフモフのスリッパ。

これが片方、消えたのです、コツ然と！

和室の前には、片方のスリッパしかありません。

リビングの中を、隅から隅までズズーイとくまなく探したけれど、見当たらず。

そもそも、片方だけ、和室の前にちょこんとあるのも腑に落ちない。

畳の部屋に、片方だけのスリッパを履いて入ったとでもいうのか、わたし？

しかし、和室の中を探してみても、見当たらない。

まさか、２階か？

もしかして、朝に、片方だけ履いて降りてきたということも、ないことはない。

しかし、やっぱり、ない。

謎が謎を呼んでいるのです。

“足を包む赤いモノが消える”

これは、もう、家の中にアレがあるとしか考えられず。

✨「時の扉」✨

これの名前を思い出せ

さて、ばあさんM宅に行くのに、手ぶらで行くのも悪いので、J子の焼いたお菓子を持っていくことにしました。

これは大変に貴重なもの。とにかくおいしい。簡単には手に入らない。いつも限定生産だから。

これを食べながら、我が家に出現した「時の扉」の話をしよう。

ばあさんMの台所はよく知ってるので、わたしがコーヒーを淹れるよ。ばあさんMんちのコーヒー豆は、高級品。うひひ。

さて、テーブルで、お菓子とコーヒーを前にして、2人は沈黙する。

なんて名前のお菓子だっけ？

ばあさんMが言う。

思い出せない。アレだよ、アレ。最初の文字すら出てこない。

思い出すまで、食べないことにしよう。

お菓子をじっと見つめ合う、ふたり。お預け犬のように、じっと見つめているだけ。

集中するほどに、答えはますます遠ざかる。

すると、がまんの尾が切れたばあさんMが、思わずお菓子に手を出した。

しかし約束を思い出したようだ。

すると、菓子から手を引いて、ipadの操作を始めた。

なにしてるん？

わかった！ブラウニーだ！

答えが出たところで、プラウニーを口に運ぶ

うまいよねえ、J子の焼き菓子。

12月には、クリスマス焼き菓子が届くよ。

食べたことないなあ。

なに言ってるのよ！毎年、食べてる！

うまいものは誰かと一緒に食べることにしてるので、特にJ子の焼き菓子は分けているはず。

・・・・ったく、◯ケてるんだから💢

冷蔵庫は見たか？

ばあさんMに、いよいよ、我が家に出現した「時の扉」について話すことにした。

すると、話を聞き終えたばあさんMが口を開いた。

それは、時の扉じゃなくて、◯ケの扉！

失礼なっ！

タンスの中は見たか？

もちろん、全部、点検した。

ソファやベッドの下は？

ベッドの下は、ほこりだらけだった。

じゃあ、冷蔵庫は？

そこは、まだ・・・・見てない。

冷蔵庫から文庫本を発見した経験のある人は、言うことが違う。

野菜室、見てみ。

家に帰ったら、まずは冷蔵庫の野菜室を点検することにしよう 。

もしも「時の扉」があったとしたら

もし、自在に時間を行き来できるとしたら、どっちに行きたいか。

それは、考えるまでもなく、未来。

過去なんて、振り返ったって、ちっとも面白くない。会いたい人でもいれば、過去の扉を開けてもいいけど、そういう人もないし。

だけど自分の未来は見たいようで見たくない。どうせなら100年先あたりを見てみたい。わたしが絶対に存在しない世界を。

一体、どんな世界が広がっているのかしら。

そしていちおう、まあ、消えた２つの赤いものも、見つけてこようと思う。

夢が広がる。

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