サイモン・シンの『代替医療解剖』を読んで、医療の有効性について考えてみた。

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息子に勧められた『代替医療解剖』という科学系の本。なかなか興味深い本だった。

 

代替医療とは何か

代替医療とは、現代科学によっては理解できないメカニズムで効果を現わすと考えられる治療法のことだ。この治療法は科学者や多くの医師が受け入れていないものでもある。

はたして代替医療には、うたわれているような効果が、本当にあるのだろうか。

『代替医療解剖』では、いくつかの代替医療の有効性と安全性を、現時点で入手できる、最も信頼性の高いデータに基づいて判定している。

著者のサイモン・シンは科学ジャーナリスト。もう一人のエツァート・エルンストは代替医療の分野で世界初の教授となった人で、さまざまな治療法の有効性と安全性を精力的に調べている医療研究者である。

共著である『代替医療解剖』には立場の違う2人の客観的な視点と論理性が生かされている。

この本で検証の対象として取り上げられた代替療法は4つ。「鍼」「ホメオパシー」「カイロプラクティック」「ハーブ療法」である。

また付録の代替医療便覧にて、わたしたちがよく見聞きする代替療法についても、調査をし評価を下している。

 

著者2人の目的

地球上には歴史的経緯や経済上の理由から、代替医療意外の治療が難しい国や地域もある。

しかし、代替医療が行われているのは、発展途上の国に限ったことではない。先進国である日本でも、一般的に鍼灸やカイロプラクティックが利用されている。

近代的な医療が十分普及している国々でも、代替医療は決して廃れてはいない。むしろ代替医療の市場は盛況で、全世界で数兆円規模に成長している。

テレビからはサプリメントのCMが頻繁に流れている。サプリメントも代替療法の一つだが、素人目に見ても「?」という商品も多い。

サイモンとエツァートの2人がこの本を書いた目的は、代替医療を否定することではない。

2人は現代の科学知識で理解できないことは未来に託せばいいと考えているようだ。しかしその一方で、本当にうたわれているような実質的な効果があるのか、または危険性の有無を明らかにしようとしているのだ。

誰かが新しい治療法を提案したなら、それが効くかどうかを判断するためには、意見ではなく科学を用いなければならない。

出典:『代替医療解剖』新潮文庫

 

医療の歴史

近代医療が代替医療と大きく違う点は、効果が証明されてるいる治療法を選択しているということだ。エビデンス(科学的な根拠)という言葉も頻繁に聞かれるようになってきた。

現代の医療において最も優先されるべきは効果があるのかということだ。もちろん危険が伴う場合には、そのバランスで治療法が選択されることになっている。

過去の経験からの積み重ねで治療が行われているのではなく、どんな人にもある程度の効果が認められるという結果を持った薬や治療法だけが、医療の現場では主流を占めているのだ。

ここで今更ながらに、わかったことがある。

治療法や薬が世に出てくるまでには、膨大な時間と手間と金がかかっている。

 

瀉血という治療法

ジョージワシントンは瀉血という治療によって1799年に命を失っている。

瀉血とは病人の体から血を抜くという治療法のことで、古代ギリシャから始まったこの治療は、なんと1800年代まで続いていた。

今では考えられない医療がずっと続いてきたのだ。そして多くの人が病ではなく、治療によって命を落としていたと推測されるのだ。

最初は誰かの些細なまぐれ的な成功が、いつのまにか「これは効果がある」と信じられることに発展していく。それを信じ込む人たちによって受け継がれていく。このシステムはデマの拡散と紙一重である。

「検証」という考えが広まったのは、本当にごく最近のことなのだ。

この本ではそのような医療の歴史にも、多くのページが割かれているのだが、人類はいつでも病と闘ってきたのだと実感する。

 

壊血病が解決した経緯

船を繰り出して世界征服に出かけたはいいが、なぜか船員たちが船の中でばたばたと死ぬ。この原因を見つけるまでにも相当な時間がかかっている。

壊血病の原因がビタミンCの欠乏によって起こることは、今では広く知られている。

当時船員たちが船上で食べていたのはビスケットや塩漬けの肉や干し魚などで、ビタミンCは摂取しようもなかった。当時は保存する術もなかったから、仕方ないといえばしかたない。

ここでも治療は瀉血が定石だった。

こういう歴史を知っていくと、人類は病を少しずつ克服してきたが、その間には多くの犠牲があったことがよく分かる。そして現在の医療がどれだけ価値があるものなのか、よく分かる。

と、同時に現代の医療もあくまで途上であって完成したものではないし、過信することもできないものであることも分かる。しょせん人のやることである。

未来の人間からみたら「こんなことも知らなかったのか!」ということはいくらでもありそうだと妄想してしまう。

 

『代替医療解剖』から学ぶこと

60歳を超えたわたしが、これからどう生きていきたいのか考える時、医療とのかかわりを考えることを避けては通れないだろう。

現実的にわたしの身体にも、あちこちに不具合が見え隠れしている。60年も使ってきたのだから、当たり前である。だから嘆きもしないし、悲しいとも思わないけれど、やはり生き物なので不安だけは消えない。

わたしはどの時点から医療とかかわるのか、機会があるごとに考えている(つもり)だ。

論理的思考をどう組み立てて、自分の決断に生かしていくのか。論理的思考の組み立て方という点でも、『代替医療解剖』という1冊から学ぶことは多かった。

※現代の医療や代替療法について興味のある方にはおすすめできる1冊です。訳もレベルが高く大変に良書で、科学に不慣れな読者が読んでも分かるように、わかりやすく書かれています。ぜひ!


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ABOUTこの記事をかいた人

1957年生まれの64歳(2017年に還暦を迎えた)。埼玉の片田舎で自由気ままに1人暮らしを謳歌している。 中年化した2人の息子はそれぞれ家庭を持ち、日本のどこかで生息中。 愛読書は鴨氏の書いた『方丈記』。 好きなミュージシャンは山下達郎氏と反田恭平氏。 3歩歩くとと、すべてを忘れる「とりっつん」に変身するという特技の持ち主。