村田沙耶香の『消滅世界』。近未来、家族の形がこんなふうになったら、どうする?

『消滅世界』が余りにも面白かったのです。村田沙耶香さんの作品に魅了されております。

さて、何がおもしろかったのか。

妻とか夫は家族。家族だから恋愛はしない。「親子が恋愛したら気持ち悪いでしょ」と同じということらしい。では、子孫はどうやって、増やして育てていけばいいの?と、こんな話。

なかなか面白い設定なんです。SFだけれど、ありそうで興味をそそられます。

この話、裏返して読むと、面白いです。最後から読むというこではなくて・・・もしかしたら、現実の世界で「こうなればいい」と思っている人がいるのかなと思ったり。

「そうなったら、あなたはどう?」と問いかけられている感じがします。

人間とは何か。愛とは何か。「人を好きになる気持ち」と「生殖」を分けて考えるとこんなことになるんだなあ。

恋愛と生殖を結びつけたのは誰なんだっけ?いつだっけ?

社会が形成されて子供を育てるのに都合がいいから、結婚という形をとるようになったのは、そんなに古いことではないはずです。

動物は、家族を持続するために努力することなんてなくて、子孫を増やして「はい、さようなら」ですよね。

倫理感なんてものは、時代によって、その時代に都合のいいように流布されて変化していくもの。永久的に「これが正しい」なんて倫理感もないのかもしれない。いや、ないんです。

だから『消滅世界」の倫理感は今の倫理感に合わせたら、とんでもないことだけど、こんな世界もありえなくはないと思うのです。

人間が動物でなくなっていけば、こういうことにならざるをえないのかもしれない。しかし、人間のややこしい「心」はやはり「愛」を求めていくということなんでしょうか。

自分だけを維持していく世界。自分ファーストの世界。

そして、それは全く根拠のないことではなく、すでにその片鱗があるから、この話が全くの絵空事だとも思えなくて、現実感があって、わたしの心を揺さぶるのかもしれないなあ。

時間は流れていく。どこへ行こうとしていのか、誰にも読めはしない。誰の思惑をも越え、どこかに流れていく。100年後の世界をのぞいてみたい気がします。

深読みしすぎかしらとも思うけれど、こんなふうに深読みさせるパワーを持った1冊だと思います。

 


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りっつん

1957年生まれの60歳(2017年に還暦を迎えた)。埼玉の片田舎で自由気ままに1人暮らしを謳歌している。 中年化した2人の息子はそれぞれ家庭を持ち、日本のどこかで生息中。 愛読書は鴨氏の書いた『方丈記』。好きなミュージシャンは山下達郎。 時々、3歩あるくとすべてを忘れる「とりっつん」に変身してしまう。