『スマホ脳』はスウェーデンのアンデシュ・ハンセンという精神科医が書いた本です。
静かに浸透したスマホ
この本には、人がスマホを持つことによって、脳がどう刺激されるのか、そしてどんな影響を受ける可能性があるか、書かれています。
そして、ハンセンさんの考えた解決法も。
ケータイ電話が普及し始めたころ、友人とこんな会話をしたことを思い出します。
「ケータイ、持つ?」
あの頃、人々の中にはある種の戸惑いがありました。
ところが、スマホはごく自然に浸透してしまった。そんな感じがしています。
スマホは、ケータイ電話とパソコンが合体したもの。
この2つのアイテムはすでに馴染んでいたので、生活に入り込まれることに警戒心を持つことが少なかったのかもしれません。
いやいや。人はとにかく新しいものが好き。次に何が出てくるか待っているのだから、良し悪しなんて考えてるヒマはない。
そして今となっては、スマホなしの暮らしには後戻りはできない状態になっています。
なんでもかんでも押し込めてありますので、スマホなしで暮らすと、いろいろと不具合が生じます。
報酬系を喜ばせる
スマホという機械自体は、スイッチを入れなければ、だだの箱。
だけどこの箱は、スイッチを入れた途端に、いろんな情報を教えてくれます。文字だけでなく、音や映像まで使って。
まさに四方八方から情報を集めてきてくれるのです。しかも指1本で。ここがポイント!
“何か起きるかも”という期待ほど報酬中枢を駆り立てるものはないそうです。
だから、スマホのスイッチ入れると、ドーパミンが放出予定の仕組み(らしい)。
自分にとって無関係な事件でも、利益にならない話題でも、知りたいという本能を刺激されて、喜んでしまうらしいのです。
本能直結ですから、こりゃもう身から離しておくなんて、できない。
手元にないと、なんとなく心細い感じがしてしまうのは、そういうことだったのね。
本能に訴えかけるツール
人間という生き物は“かもしれない”が好きな生き物だそうです。
- いいことがあるかもしれない。
- 怖いことがあるかもしれない。
- 危険が迫っているかもしれない。
- あんなことが起きているかもしれない。
だから、
1つでも多くの”かもしれない”を知りたい!
それは、生き抜くという点においては有利に働くかもしれない(笑)
ボーッとしてたら、どんな危険にさらされるか、分かりません。
だから、先祖代々、四方八方に注意を払いながら、生きてきたのです。
時代が進み、技術が進歩したおかげで、四方八方を監視していなくても、わりと安全に暮らせるようにはなりました。
しかしハンセンさんによれば、その危険回避の本能だけは残っているというのです。
そして、スマホはその危険回避の本能に訴えかけるツールとしてぴったりだというのです。
史上最大の行動変容
たぶん、人類はいま、大きな変革のど真ん中にいるのです。
わずか50年ほどの時間で、世の中は大きく変化しました。
わたしが生まれたときには、我が家にはテレビもなく、電話もありませんでした。ついでに言えば、洗濯機も掃除機も、冷蔵庫さえも。
誰かと連絡を取り合う方法といえば、手紙とか電報くらい。
一旦家を出たら、家族と連絡が取れなくなるのは当たり前。
家を出たら、それぞれが何をしているのか、わかったもんじゃない。
ところが、どこにいても、簡単に連絡が取れるという世界に変わってしまいました。
だけど実は盲点もあるのですよ。
その人の本当の居場所はわからない。
個人に繋がっているだけで、場所に繋がっているわけではないから。
「いまどこ?」と聞かれて、何度か嘘をついたことがあるんけど、みんなは正直に答えてるのかしら(笑)
掴んだ情報なんて、そんな程度。
ネットワークに繋がっているようで、その足元はグラグラしているのです。
なんだか、スリリングな世の中になってきました。
これから100年もたてば、いまの時代の位置付けがはっきりするはずですが、この時点では、今がどんな時代なのか、まだよく見えてはいません。
この時代、『産業革命』と名付けられた時代のように、人類の行動の大きな転換点になっていることは確かなことだと思います。
ささやかな抵抗
ここまできたら、もう後戻りはできません。この方向に進んでいくだけ。
だけどスマホに支配されるのも、ちょっと癪に障る。なんてったって、疑い深い昔もんだから。
だから、自分なりに使用制限をかけています。
家の中では、できるだけ手元におかず、3時間程度の外出には、携帯しないようにしたりとか。
そして、体を使って情報を集めるということも忘れないようにしています。
自分の目と耳を使って、そして頭を使わせる。
頭をスマホにつなげるのではなくて、身体につなげる。
悪影響を受けずに便利な部分だけを利用したいなんて、虫のいい話かもしれないけれど。
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