お隣のKさんは昭和4年生まれとのこと。今年88歳ですね。
3年前に亡くなった父は昭和3年生まれでしたから、生きていたらも今年は喜寿だったのですね。なくなった父の年を思わず数えてしまいました。
ゴミ出しでKさんに遭遇
Kさんご夫婦は2人暮らし。82歳になるおばあさんが体調不良ということで、ご主人がゴミ出しなどに出てこられます。
今朝はプラスチック系のゴミの日。軽いけれどかさばるゴミです。
お隣を通り過ぎようとしたところで、Kさんのご主人とばったり。
Kさんがゴミ袋を持って出ていらしたので「わたしが一緒に捨てますよ」と言ったら「いや、一緒に参りましょう」と。
「参りましょう」ですよ。(笑)
そんなに遠いわけではないです。歩いて50歩くらいかしら。
背中がピンとしているんです。言葉もきちんとしていらっしゃいます。
おしゃれなKさん
Kさん、この日の装いはブルーのシャツにズボン。ズボンはサスペンダーできちんと止めてました。
わたしは男性のサスペンダーが好きです。おしゃれな柄も増えました。
『釣りバカ日誌』の社長のスーさんはいつもサスペンダー使用紳士です。品よく見えます。
三國連太郎だからだろうって?
確かにそうかもしれませんね。でも普通の人でも似合う人はいますよ。背筋を伸ばしてサスペンダーです。
男性のスーツ姿、好きです。上着を脱ぐ瞬間、好きです。サスペンダー、紳士風でいい感じです。
・・・って、そんなわたしの好みなんか、どうでもいいの(笑)
話はお隣のおじいさんのことです。
Kさんは髪もちゃんと整えられていて、すがすがしい。ビシーッとしています。
お年を召しても身づくろいに気を配る。ステキです。「Kさんはいつもおしゃれですね」と言ったら、
「そりゃ、ただでさえ汚くなってるんだから、気にしないとね」と笑いながらおっしゃる。
人は見かけも大事だと思います。おしゃれは自分も他人も気持ちよくする!
Kさん、死に支度中
ゴミを置いてから、少し話をしました。
「今、死に支度をしているんだよ」とおっしゃる。
88歳と82歳のご夫婦ですから、当然ですよね。
わたしは「そんなこと言わないで」とか言いません。ただ「そうですか」とお答えしました。
そんなうわべの返事を待っているとは思えなかったです。きちんと自分の現状を見つめているなあと感じました。
奥さんの具合があまりよくないようで、本気で始末をやっているようでした。それにしても立派な88歳です。
Kさんの戦争体験
突然、戦争中の話を始めたKさん。
16歳で終戦。その前年からは少年兵として訓練を積んだのだそうです。食べる物に大変苦労したと言ってました。
だから今でもテレビで「大食い」の番組を見ると、腹が立って仕方ないんだとか。わたしもあの番組は好きじゃない。
家は空襲で焼かれたのだそうです。
戦争を体験した世代は、人生の中で一番の大きな体験として、消し去ることのできない苦い記憶として、最後の最後まで残るものなのでしょう。
わたしの父は、亡くなる半年前に、どうしても終戦を迎えた「松本の飛行場」に行きたいと言い出しました。場所を探して連れて行きました。
今では飛行場は形はありませんが、そのなごりをタクシーの運転手さんに教えていただきました。
滑走路が小学校の登校路になっていました。
その2か月後、父が今度は「靖国神社」に行きたいと言うので、靖国神社にも連れていきました。父との最後の東京になりました。
なぜかわたしは無理してでも行かなくてはと思いました。虫の知らせだったのだと思います。
靖国神社をお参りして、東京の夜景を楽しめるホテルに一泊。父はビールを飲み、焼き鳥を食べ、とても元気でした。
それから3週間後、父に末期ガンが発覚。その2か月後に亡くなりました。自分でも亡くなる予感がしたのでしょうか。
人生の最期にどうしても行きたかったのが、飛行場と靖国。
たぶん父は心残りを減らして、この世を旅立つことができたと思います。
わたしたちは戦争を体験せずに済むのでしょうか。
そう願いたいものです。
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