「人は生きてきたように死ぬ」ということを信じることにする。

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※この記事は2019年4月20日に更新しました。

酷暑の中、エアコンのない家で1人で生活している85歳の義母。そんな義母から久しぶりに電話がかかってきた。

わたしは自分から義母に電話をすることは、ほとんどないけれど、電話がかかってきた時にはそれなりに優し気に対応しているつもりだ。

だから義母は何かあると電話をかけてくる。

 

義母の現状

現在の住まいの環境がどうにも気にいらない義母。10年前にその地に家を建てた時には「こんなに素晴らしい所はない」と言っていた。しかし転居して間もなく「近所も市も気にいらない!」が始まってしまった。

そしてついに「別の町に土地を探して家を建てたい」が始まった。今回の電話のメインテーマはこれだった。自分の年齢も、足が不自由なことも、すっかり頭にはないようだ。

こんな展開になったことを、わたしはちっとも驚かない。

なぜなら、わたしが義母と付き合うようになって40年。転居は4回

義母はご近所環境がイヤになってもめては、転居を繰り返してきた。義母がすごいのは、賃貸ではなくあくまで新居を建てるというところにある。自分の気に入った建て方の家でないとだめなのだ。

そしてまずは施工業者とトラブる。続いて引っ越し業者とトラブる。入居するなり、ご近所とトラブる。最近では市役所ともトラブっているらしい。

どこまでいっても、いくつになっても、義母は「自分だけが正しい」のだ。妥協など、まったくない。

そんな人だから「嫁」などというものは、かつては最大の標的だった。それが今ではわたしくらいしか電話をかける相手がいないようだ。何の因果だろうと、わたしは笑っている。

まあ、いろいろあったが、今、わたしは義母を恨んだりしてはいない。「どうしようもない人だけど、学ぶところもある」と本気で思っている。

実は善人っぽいわたしが心の中にいて「もっとめんどうを見てやれ」という声が聞こえることもある。

しかし、どうしても、わたしは動けない。はっきり言って、自分の時間やお金を費やせないのだ。これはもうどうしようもない。

義母は「掃除も洗濯もできない」と言ってる。しかしヘルパーさんはダメ。他人を家に入れるなんてもってのほか。掃除機も洗剤も使うな。こんな調子なので、わたしがやったところでダメに決まってる。

これから、どうしたらいいかなあと考えていた今朝。こんな記事が目に止まった。

孤独死は絶対イヤ? 70歳の答え「人はその人が生きてきたように死ぬから大丈夫」

 

生きてきたようにしか死ねない

この記事を書いた70歳の松原さんはひとりの生き方を書き続けているノンフィクション作家だ。その松原さんが主宰する会の90歳の会員を訪ねた時の経験談が書かれてあった。

 ひとり身の人の中には、孤独死は惨めだとか、残った人に迷惑をかけたくないから孤独死だけは避けたいとか、最期は人知れずではなく誰かに看取ってほしいとか、わけのわからないことを言っている人が多いが、「人はその人が生きてきたように死ぬ」から大丈夫よと、わたしは言ってさしあげたい。(出典:同上)

 

こう死にたい、ああ死にたいと思うのは自由だが、貝のように閉ざして生きてきた人はそのように。社会のために生きてきた人はそのように。友達を大切にしてきた人はそのように。生きてきた延長上に、死はあるのではないだろうか。となると、今をどう生きているかが問われることになる。(出典:同上)

 

 

「恩」の行き来

人付き合いは「貯恩」みたいなもんだと思う今日このごろだ。「恩」だ。わたしとって「恩」とは、ありがたいと思える力添えのことだ。

人と触れあった数だけ、人は互いに「恩」を貯めていく。その「恩」に高い利息が付いたり、そうでもない利息が付いたりして、お互いの間で行き来するものだと思うのだ。

利息が高いか低いかは「恩」を送った方ではなくて、「恩」を送られた方が決めること。だから高い利息を期待したりするのはお角違いだ。打算での行為なんて、あっさり見破られて利息は低いに決まってる。

「言葉」でもない。言葉なんてリアルな人間関係では大した力にはならない。たまには力になることもあるだろうけど、わたしはあまり「言葉」を信用していない。

「何をしたか」ということにかかっている。行動だ。

一番メンテナンスが必要な人間関係は、実は家族だろう。「家族だから何を言っても、何をやっても許される」なんてほど、家族は甘くはない。

そして友達との付き合いも、しかりだ。「仲がいいんだから何を言っても、やっても許される」なんてほど、他人も甘くはない。

 

母たちとの貯恩通帳

告白すれば、義母との通帳には残高が少ないのだ。ほぼナシといってもいい。

仏にはなれないわたしは高い利息をつけられない。自分の時間やお金を犠牲にはできないのだ。

だから、松原さんの記事を読んで強く納得したいのだ。

「それが義母の人生なのだ」と。

冷たいようだが、わたしはもう自分に無理を課すことはしないと決めている。それがわたしの人生だから。

きっと義母は義母らしく終わっていくだろうと思う。それでいいと思う。もちろん、わたしがやらねばならないことだけはやるつもりだ。

そういうことで言えば、嫌っている実母ではあるが「恩」の残高はかなりあるので、きっと母に何かあったら、自分の時間とお金を使うだろうと想像している。その時には妹がどうであろうと、わたしは自分の心に従って打算なく行動するだろうと、自分を信じている。

人は生きてきたように死ぬ。

少なくともわたしが今までに見てきた身近な死は、みんなそうだった。だから、わたしは自分に言い聞かせて一人暮らしを続ける。

「大丈夫。なんとかなる」と。

明日のことなど思い煩うことなく、今を懸命に生ききろう。

人は「今」しか生きていない。

「今」をつなげていって、ある時「今」がつながらなくなるだけ。


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りっつんブログが本になりました。

経験談や人情話から猫話。そして実用的な老後のお金の話まで。心を込めて綴りました。

「老後のお金」など、ブログではあまり触れていない話題にもかなり踏み込んで書いているので、お手にとって頂ければ幸いです。

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6 件のコメント

  • いつも共感しながら拝読しています。
    りっつんさんは私よりひと回り年下ですが、人生のお師匠さんだと思っています。
    読書、料理、株、どれも後追いさせてもらって、世界が広がってきました。
    ただ、息子は三人いますが、残念ながらりっつんさんのようにはいきません。
    もっと早く、りっつんさんとお近づきになれればよかった。
    どうぞ、これからも明るく元気にブログで色々教えてください。
    毎日楽しみにしています。

    • マミーさん。
      おはようこざいます。
      世界が広がったなんて言われると、本当にうれしいものですね。
      これからも、何か少しでも参考になるようなことを書けたらいいなと思っています。
      暑さが続きます。どうぞお体を大切に。ヽ(^。^)ノ

  • 本当に危ない暑さが続いておりますね。お久しぶりです。毎日、りっつんさんのブログを読んで励まされています。自分の置かれている立場にあてはめながら、きっと、このブログを読んでいる方は、みんなそうだと思います。貯金ではなく、貯恩ですか。うまいこと表現しますね。
    人間は動物と違って理性がある生き物とは言われますが、その理性が最近は怪しくなってきていることを、なんとなく気が付き始めているのではないでしょうか。感謝する、尊ぶ、慈しむ、相手を思う、そんな背景のある言葉を掛け合うことだけでも、もう少し生きやすくなる人生になるように、私は思うのです。
    りっつんさんのブログの先に、さまざまな思いを共有している人たちが、存在しているということをどうぞ忘れないでください。後先になりましたが、暑中お見舞い申し上げます。

    • 末摘花さん。
      おはようございます。
      本当に暑いですね。災害レベルの暑さとのことですが、本当にそう思います。
      わたしも背景のある言葉かけはとても大事だと思います。
      しかし、だからこそ、背景のない(心のこもらない)上っ面だけの言葉が気になるのかもしれません。
      わたしはそんなことを経験しすぎたのかもしれませんね(笑)ヽ(^。^)ノ

  • りっつんさん、おはようございます。
    1年前の記事に飛んで来ました。
    松原さんには、本を通じて興味を持ち、主宰されている会にも一度だけ行ったことがあります。私にはご縁はなかったようです。
    その頃は、自分の身仕舞を真剣に考えていたのですが、今ではそんなことは
    どこ吹く風になってしまいました。
    それなりに死んでいくんだろうなと思います。

    • しばふねさん

      こんにちは。
      松原さんの会に行ってみようかなと思ったこと、ありました。
      でも、一歩進まず。
      わたしも縁がなかったのでしょうね。
      わたしも自分の始末はどこ吹く風になってしまいました。
      それなりに生きて、それなりに死んでいくだけ。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ

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    ABOUTこの記事をかいた人

    1957年生まれの64歳(2017年に還暦を迎えた)。埼玉の片田舎で自由気ままに1人暮らしを謳歌している。 中年化した2人の息子はそれぞれ家庭を持ち、日本のどこかで生息中。 愛読書は鴨氏の書いた『方丈記』。 好きなミュージシャンは山下達郎氏と反田恭平氏。 3歩歩くとと、すべてを忘れる「とりっつん」に変身するという特技の持ち主。