ふと思い出した、27年前の夏の終わり。

今から27年前の、季節はちょうど今ごろ。ふと、思い出したシーンは、都内の病院の廊下のはじっこ。

 

夫のがん再発

夏の終わりに見つかった夫のがんの再発。定期検診でのことでした。

最初の手術をしてからもうすぐ5年。5年たてば、もしかすると治ったと言えるかもしれない。

そんな希望を持ちつつあったわたしたち。その5年目を目前にしての再発の宣告でした。

身体に目に見えるような変化も、兆候も見られなかったので、まさかと思いました。

とりあえず夫は入院して、抗がん剤の投与を受けることになりました。

わたしは片道1時間ほどかけて、毎日病院まで通うことになりました。

 

子どもたちのこと

入院してまもない頃のこと。夫の病室は3階。わたしはエレベータを使わず、いつも陰のほうにある階段を使っていました。

病室に向かうためにたまたま階段を上がったところで、階段を下りてきた主治医のS先生とばったり。

大学病院でしたので、当時、先生は助教授という肩書きだったと思います。今思えば、わたしたちより10歳くらい年上だったのかな。

S先生が「ちょっとこっちへ」と言ってくださって、廊下のすみのほうで2人で話をすることに。

S先生が真っ先にわたしに言ったのは、こんなこと。

「お子さんたち、いくつになった?」

「上の子が4年生に、下の子が2年生になりました」

すると、

「大きくなったね。よかった、よかった」

先生は嬉しそうにホッとしたような表情をされていました。

S先生ががんの摘出手術をしたことで、5歳と3歳だった子どもたちは、それぞれ小学生に。

先生はずっと気にかけてくださっていたのです。

それからしばらくいろんな話をしましたが、その内容はまったく覚えていません。けっこう長く話をした記憶はあるのですが。

先生が「時間を伸ばすことができて、よかった」という言葉だけが、わたしには今でも残っているのです。そして時々思い出すのです。

最初の手術は胃の全摘術でした。8時間もかかる大手術でした。

摘出した臓器を確認するために手術室の前に呼ばれました。S先生は汗びっしょりで手術室から出てこられて、「うまくいきました」と告げてくださいました。

あの汗も忘れられません。

夫も、そしてわたしも、何人ものお医者さんや看護婦さんに支えていただきました。みなさんには本当によくしていただいたので、今でも感謝の気持ちしかありません。

 

完治はできなくても

完治はできなかったけど、わたしたちは現代の医療の恩恵を受けることができました。

最初のがん発見から、亡くなるまで5年。

わたしたちにとっての5年は大きかった。手術をしなければ、どれだけ生きられたのか、それは分かりません。

しかし息子たちは父親とのふれあいの時間を増やすことができたのは事実。

次男も父親との記憶を留めることができました。

27年前のあの夏の終わりから、ひとっとびに、ここまできてしまったような気がしますが、それはたぶん違うのでしょう。

例えば21年前の夏の終わり。例えば13年前の夏の終わり。たぶん、それぞれにいろいな思いを抱えていたのでしょう。もう、みんな遠い彼方に行ってしまったけれど。

再発がわかった翌年の夏には、夫はわたしたちのそばにはいませんでした。あの夏は本当に暑かったなあ。

現在、息子の1人はがんに関わりのある仕事をしています。

そんなことを知ったら、S先生は驚くかなあ。

誰かの力があったからこそ、自分がここにいるのだということを、実感しています。

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6 件のコメント

  • 子育て中の5年は本当に大きいですよね。
    我が夫も癌発覚から5年と少しで逝ってしまいました。
    決して良い状態ではなかったので医療のおかげでいただけた5年だったと思っています。

    まだ小学生だったご子息とりっつんさんの思いは私の想像を絶するものがあります。

    我が家は末っ子が小学生の時に病気がわかり高校生になった時に逝ってしまったのですが、それでもあと数年生きていてくれたらと思ったものです。

    上の子がひとり医療に携わって、当時の父親のような人と日々関わっています。
    人生って、不思議ですね。

    自分語り、失礼しました。

    • ねこりんさん

      こんばんは。

      やはり5年というのは、1つの壁なのでしょうね。
      早く5年という壁を簡単にクリアできる方法が
      できたらいいなあと願っています。
      長男は大学に入ったときには、そういう分野ではなかったのですが、
      いつの間にか、そんな道に。
      本当に人生は不思議ですね。

  • はじめまして。私の方は随分前から 勝手にブログにお邪魔してきました。
    今回 本を出された事を知り 早速 楽天から取り寄せました。
    今 猫シャンクスの登場の辺りです。
    今日のブログで ご主人が登場され とても切ない気持ちですが
    りっつんさんは賢い方で思い出を大事にされているのが伝わりました。
    遠くからですが 応援しています。

    • fumさん

      初めまして!
      コメント、本の購入、ありがとうございます。
      シャンクスの話は面白かったでしょうか?
      ヤツはなかなかな猫なんですよ(笑)

      これからもどうぞお立ち寄りくださいねヾ(@⌒ー⌒@)ノ

  • りっつんさん、こんばんは。
    「心地よい一人暮らし」、やっと手に入れました。
    大船のルミネの本屋さんでは、あったはずだけどと言われ、探していただきましたがすでになく、たまプラーザの有隣堂にあった残りの1冊をやっと手に入れました。
    その日のうちに読み終えました。ブログで読んでいたはずですが、全く新しい話として読むことができました。

    さらに、コメント欄から「こびと株」のことも知りました。
    親思いのいい息子さんですね。
    今日は1日中、ひたすら「こびと株」のブログを読んで過ごしましたが、まだ読み切れていません。
    明日も資産運用のお勉強をします。

    最後になりましたが、出版おめでとうございます。

    • もこちゃん

      おはようございます!
      大船とたまプラ。馴染みのある地名に胸キュンです。
      たまプラにも、わたしの本、あるんですね。うれしいなあ。
      たまプラ東急の屋上の遊園地、子供たちを連れてよく行きました。

      本を読んでくださって、ありがとう!
      なにしろ、ネタは1つしかないのです。
      「新しい話として読めた」と言っていただけて、
      本当にうれしいです。
      なにしろネタは1つしかないのです。
      新しい話のように、
      ブログの読者さんにも読んでもらえるようにと、
      それを目標にしていました。

      こびと株の資産運用部分は、
      わたしたちシニアにも役立つと思います。
      が、わたしは数字が多くて、読み続けられません(笑)

      これからも、どうぞご贔屓にヾ(@⌒ー⌒@)ノ

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    ABOUTこの記事をかいた人

    りっつん

    1957年生まれの60歳(2017年に還暦を迎えた)。埼玉の片田舎で自由気ままに1人暮らしを謳歌している。 中年化した2人の息子はそれぞれ家庭を持ち、日本のどこかで生息中。 愛読書は鴨氏の書いた『方丈記』。好きなミュージシャンは山下達郎。 時々、3歩あるくとすべてを忘れる「とりっつん」に変身してしまう。