この季節になると思い出す、”ゆっちゃんの黄色い靴”

“小さな黄色い靴”の写真を見つけました。

この写真に写っているかわいい靴は、ゆっちゃんのものです。

この靴を置いて、ゆっちゃん家族がアメリカに渡ったのは、 9年前の春のことでした。

 

長男家の旅立ち

2012年の3月の終わり。

長男は博士号を取得し、大学院を卒業しました。9年間の大学生活でしたが博士課程に入ると同時に結婚し娘をもうけていました。

卒業式から、わずか1週間後。

一家はアメリカニューヨーク州にある研究所へと向かうことになりました。

新人研究者には長期にわたる身分の保証などありません。

先はわからないけれど、チャンスがやってきたら、とにかく乗るだけ、やってみるだけ。

その研究所の教授から声のかかった息子は、迷うことなく行くことを決め、そして嫁も公務員の職を辞めて、ついていくことを決意したのでした。

成田空港まで次男とともに見送りに行き、ゲートの前で別れたときのことを思い出すと、今でも胸がいっぱいになります。

まったく知らない町で、言語の違う国で、新しい職場で、新しい人間関係で、新しい暮らしをゼロから立ち上げる息子夫婦。

しかも1歳半の幼子を連れての13時間の長時間フライトと、住まいもまだ決まってはいない新しい土地での暮らし。

言うなれば、ほとんど冒険。

息子にも嫁にも海外生活の経験はありません。大きな研究所とはいえ、日本人は数えるほどしかおらず、頼れる人はほぼゼロという環境。

わたしには想像もつかない世界です。

しかし息子たちには不安もあったはずだけど、未来への大きな夢を抱いていたはず。

大きなトランク2つに、3人分の当座の衣類と日本食を詰め込んで、そして有り金を握りしめて、旅立っていきました。

 

母としての修行

果たして本当にうまくやれるのか。

何かあれば、もう二度と会えないかもしれない。

前年に震災を経験したので、そんな思いばかりが浮かんできてしまいます

ついついマイナスなことばかり考えてしまうので、できるだけ顔にも口にも出さないように努めていました。

聞かれないかぎりは、意見を言わない。これこそがわたしができる唯一のことでした。

息子たちの考えをただ100%応援するだけ。

これは実母との関係から学んだことの1つです。実母は反面教師。

誰かの道に要らぬ塀を立ててはいけない。先入観を差し込んではいけない。

年長者の心に思いつくままの不安などは、転ばぬ先の要らぬ杖。つっかえて、いく道を歩きづらくするだけ。

若い人のエネルギーを信じたほうがいい。

自分たちだって、そうだったじゃない。失敗しながらやってきたじゃない。そう言い聞かせていました。

しかし、まあ、これは、ほぼ修行でした(笑)

 

ゆっちゃんの靴

息子たちの荷物は我が家で預かることにしました。3人家族の荷物は2階の6畳間に入る程度のものしかありませんでした。

その中には、ゆっちゃんがほんの少し前まで履いていた靴がありました。

少しきつくなったので、新しい靴に履き替えてアメリカに向かったゆっちゃん。

残された靴を洗って干しておこうと思ったのは、その日があまりに美しい快晴だったから。

もうゆっちゃんは履くことはないけれど、きれいにしとこう。

小さな靴を干しながら、空を見上げて、アメリカにいる3人を思いました。

ちゃんとご飯を食べているかしら。

あのころ、わたしたちをつないでいたのは、スカイプとフェイスブックでした。

毎日、フェイスブックでお互いの状況を確認。だからこの黄色の靴の写真も撮って載せました。

※フェイスブックは、現在はまったくやっていません。

そして時間があればスカイプ。時差は13時間程度。こちらの朝は、あちらの夜。

我が家のテレビで「お母さんといっしょ」を映して、スカイプで生中継したりしました。

息子たちは研究所の宿泊施設(とはいえ、さすがアメリカ、一戸建て)に住みながら生活を開始し、研究所の近くの町に落ち着き先のアパートが見つかったのは5月半ばのことでした。

そして3ヶ月後に、わたしは生まれて初めての国際線、ニューヨーク行きのJAL便に乗っていました。

そして翌年には、ともたんの出産応援のため、二度目の渡米。

初めてでも、ひとりでも、不安症でも、必死にやれば、会いたい気持ちがあれば、なんとかたどりつけるんだなあ。

息子たちのおかげで、アメリカという国の一部を見ることができ、視野が広がりました。価値観、大きく変動!

そして、やればできるという自分にも出会うことができました。

夏祭り。夕暮れを見ながら、アメリカの小さな町を思い出す。

2019年8月12日

 

足のサイズは祖母より上に

アメリカに渡ってから、わずか2年後の春のこと。

突然に関西の研究所に新たな職が決まり、日本に戻ってくることになった長男一家です。

「もう帰って来るんかい?」と思いましたけど、ホッとしました。

関西にも知人は1人もいないけれど、アメリカよりはずっと近いし、なんてったって関西弁も日本語。しかも住まいが、わたしと夫にとって縁のある場所。

不思議な縁を感じました。何か、ある(笑)

3月初めに幼児を2人連れての再びの13時間超えの飛行機旅。

息子たちは経験という名の宝物を持って、帰ってきました。

あれから、8年。

引っ越しを繰り返して、息子たちはこの春、住まいをみちのくに移しました。

メンバーも増えました。いぬ子さんです。

黄色い靴を履いていたゆっちゃんは、わたしの背丈も足のサイズも超えてしまいました。

なのに、この黄色い靴の写真を見ると、天然クルクル髪だったゆっちゃんがそこにいるような気がしてしまいます。

これから10年後。

息子たちは、果たしてどこに住んでいるのでしょうか。

もしかすると息子夫婦が、空港で娘たちを見送る側に立っているかもしれません。

これから、どんなことが待ってるのでしょうか。

あと、どれくらいの時間を、みんなと一緒に過ごせるでしょうか。

時間は無限。

だけど、一人一人の持ち時間は有限だということを、感じています。

8年前のアメリカの小さな町にて。

2020年7月15日

アメリカの思い出。ある日突然、遊園地がやってきたの巻。

2017年7月12日

科学者はまるで遊牧民のようである。

2018年3月5日

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りっつんブログが本になりました。

経験談や人情話から猫話。そして実用的な老後のお金の話まで。心を込めて綴りました。

「老後のお金」など、ブログではあまり触れていない話題にもかなり踏み込んで書いているので、お手にとって頂ければ幸いです。

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8 件のコメント

  • おはようございます
    おやすみの日です。朝から一気に読んで、じわーんとしちゃっています。9年前のことなんですね。ゆっちゃんやともたんの成長は、早いですね。私は、りっつんさんのお母様のようについつい子ども達の心配をして、行く道の石を拾うタイプなんで、ここは、黙って信じて!(余計な心配も口に出さず)と改めて念じ直すきっかけになりました。すごく参考になります。横浜は今のところ快晴です。
    よい一日になるといいなぁ。

    • まめぴよさん

      こんにちは♪

      相当自分に言い聞かせないと、できないことですよね。
      ついつい口を出したくなる(笑)
      でも、それを繰り返しているうちに、
      息子たちの判断の方が正しいと思えるようになりました。

      横浜の文字という文字に反応!

      崎陽軒のシュウマイ弁当、食べたくなりました(笑)

  • りっつんさん、こんにちは! いつも楽しく拝読しています!
    この記事、とても心をうたれました。あ、他のももちろん楽しく読んでいます。

    母としての修行ですね、、私も息子の道に要らぬ塀を立てないように気を付けようと思います。
    本当にそのとおりですね、転ばぬ先の要らぬ杖! ノートに書き写しました。

    そして34年前に一人で渡英を決めた私を、気持ちよく送り出してくれた両親に感謝をしないと。。

    これから10年後ですか。。。子供たちもそして私もどこで何をしているのかなーと思います。

    りっつんさん、とても素敵に生活されていますね! これからも応援しています!

    • abuさん

      こんばんは

      修行を積んでいきますと、自然に子供たちから離れられるという、
      お土産がついてきます(笑)
      わたしはわたし。子は子、みたいな。
      程よい距離ができて、気持ちのいい関係に移行していくみたいです。

      いいご両親ですね。
      きっと心の中で泣いていたに違いないです。

      10年後、どうしているでしょうね。
      わたしも楽しみです。

      応援、ありがとうヾ(@⌒ー⌒@)ノ

  • 感慨深く読ませて頂きました。

    「母としての修行」
    一人旅もしたことがない
    私の一人息子が、高校卒業後、
    オーストラリアでワーキングホリデーのために、
    家を後にしたとのことを思い出しました。

    可愛い子には旅をさせよ
    と言いますが、
    めちゃめちゃドキドキしたのを覚えています。

    母のドキドキはよそに、
    息子は元気に楽しんだようでした

    • さっちさん

      こんばんは

      我が家の長男も高校時代に、10日間ほど、
      オーストラリアに送り出したことがあります。
      わたしには一度も経験のない国際線。
      めっちゃ、ドキドキしました。
      ですが息子は、出発前にマックでハンバーガーを食べたいと言い出して。
      ああ、これは大丈夫だなと思った記憶があります。

      若いもんは冒険者なんですよヾ(@⌒ー⌒@)ノ

  • ゆっちゃんの黄色い靴を洗った姐さんを
    イメージの中で追体験してみました。
    いろいろな感情が広がっていきました。

    反面教師。
    人の人生に介入しない。
    たとえ我が子であっても。
    失敗もまたその人の財産、奪ってはいけない。
    修行、とご自身で書いてらっしゃるように
    とても精神力の要ることでしょうね。
    養育時期に精一杯関わったからこそできることなのかな、と思いました。

    仲よきことは美しき哉──
    ご家族がそれぞれに自立して適度な距離を保って、さらに仲がいいというのは本当に素敵ですね。
    私は持ち得なかったし望み得なかったものなので、ものすごく憧れます♡ 読むだけでもおいしい♡

    • デイジーさん

      おはようございます。

      “持ったものは手放さなければならない”
      これが60数年生きてきて、ねえさんが学んだことです。

      子を持って、かわいいと思んです。
      と、同じくらいに、
      手放すヒリヒリ感と向き合わねばならない。
      それが定めのようです。

      ひとりひとりがきちんと自立すること。

      今のこの社会で生きていくには、
      それがなにより大事なんだろうと思います。
      寄り掛かり合う時代もあったのでしょうけれど、
      いまはちょっと違いますよね。

      子育ての最大難所は、間違いなく子離れだと思います。

      そして孫と楽しめるのは、とても短い期間ですヾ(@⌒ー⌒@)ノ

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    ABOUTこの記事をかいた人

    1957年生まれの64歳(2017年に還暦を迎えた)。埼玉の片田舎で自由気ままに1人暮らしを謳歌している。 中年化した2人の息子はそれぞれ家庭を持ち、日本のどこかで生息中。 愛読書は鴨氏の書いた『方丈記』。 好きなミュージシャンは山下達郎氏と反田恭平氏。 3歩歩くとと、すべてを忘れる「とりっつん」に変身するという特技の持ち主。